どす黒い日記帳

展覧会の感想など(主に都内)

#16 ペインティング・オブ・ゴールド

この日記帳も、しばらく開けないうちに埃を被り、中身も煤けてしまったように思う。
そうした中で、この日記帳に書き加えるにふさわしい展覧会を見た。

会場は、大阪市内の高層ビル。
名前には聞いていたが、踏み入るのは初めてである。

赤を基調とした、気持ち悪趣味なポスターも目を引くが、
しばしば流れてくる祭りのようなシーンを捉えた画像が、
私の足を急がせた。
(早く見たいという意欲と、ネタバレされないうちにという防御本能が綯い交ぜである。)

画になる撮影可能エリアには勿論すごみがあったが、
個人的に特に得がたいのは、ガラスケース内に屏風が立ち並ぶ、
いたってオーソドックスな展示である。
展示室に設えられた櫓の上、見えないくらい高々と絵が掲げられたり、
蝋燭の灯りを演出した照明でボゥっと絵が揺らめく(気がする)
といった演出は、絵金祭りの再現といった意味でも意義があることなのだろうとは思うが、
ちょっと「やり過ぎ」と思うのも正直なところ。
固より私の頭が古いというのも一応わかっている。

何より、あの手の「画になる」撮影エリアの罪なのは、
その目論見通り、そこら中で撮影=スマホ音が響くところである。
非常に煩い。慣れない。

そしてこうした会場では、全て撮りたい人と何故か必ず出会す。
じっくり見ている横や背後から、見る待ちではなく撮る待ちの圧がかかる。
楽しみ方はそれぞれだろうが、あの小さい画面に懸ける執念のような何かに触れると、
まるで自分が今味わっている空間や時間のすべてが、その卑小なメモリに吸い込まれていくかのような感覚になる。
空虚と言おうか嫌悪と言おうか。ーー
そのどちらでもない、曰く言い難い遣る瀬無い感覚を奥歯で噛み潰し続けながら、
今日も明日も撮影可能エリアに足を向けていくのである。