どす黒い日記帳

展覧会の感想など(主に都内)

#18 広くて狭い

蔡國強展に行った。
予想よりも、かなりごった返している。
会期が比較的短いせいもあると思うが、
展示面積の半数近くが焦げた紙なので仕方ないと自分を納得させてみる。

2,000m^2の展示室、それに休憩室まで全体を使った展示は見応えがある。
それなのに非常に狭いのである。

単純に混んでいて狭い。
大型作品が多いので結界だらけで狭い。
展示室全体が映えスポットなので更に狭い。

頭をよぎったのは、六年ほど前の草間展である。
大画面の絵画で壁全体を埋めた、撮影可能な大きい展示室。
全て壁掛けだったので、あの時の方がまだましだったかもしれない。

むしろ、その展示が狭かったのは、大部屋を見終えてから外側を回廊のように巡る
細切れの展示室のせいである。
今度は、そうした壁の仕切りが一切ないだけ、その分はましかもしれない。

とはいえ、部屋を丸ごと一室として開放し、全体を大きく使った展示。
スケールの大きさは、それだけで壮観で、十分すぎるほど見応えがある。

しかし、十分に味わえたという感覚がない。

私の場合、部屋の狭さをより意識させられたのは、キャプションの小ささだった。
作品は退いて見る大きなものがメインであるのに、キャプションの文字は間近に寄ってやっと読める程度。
それだけでもストレスが強い。

いちいち真面目に読まなくていいというのが主催のスタンスなら、
そんな細かいことに目くじら立てるとは頭が固いとか、あしらわれるだけ無駄かもしれない。
でも「解説を全文読める」というQRのリンクが掲示されていたところを見て、
それなりに不評だった想像もつく。
何れにせよ、端末でいちいちじっくり読めるだけのスペースの余裕もないのだから、
展示設計がいかにもバランス悪く、不親切な印象は拭いがたい。

休憩室に用意された展示も、内容それ自体は強い関心を喚起するものであったが、
これこそ狭すぎるし小さすぎる。写真やキャプションの情報が豊富で、
記録映像も使って丁寧に見せてくれるが、とにかく狭いというストレスが勝った。

現地に行って、何となく空間に浸っただけでも目的を果たしたのだと思いたい。
その思い込みがうまくいくかは分からない。