どす黒い日記帳

展覧会の感想など(主に都内)

#4 美術館と劇薬

しばらく行っていない美術館に行こうと思った。

たまたま近くに用があったので、坂を30分ほど登ってワタリウム美術館へ行った。

ワタリウムは、私にとって特別な位置を占めている。

いつ劇的ビフォーアフターされてもおかしくない、狭小住宅のような建物。
展覧会の、他に類を見ない謎のラインナップ。
個人的な満足度の平均をとったら、星2つくらいだろうか。
にも関わらず、時々無性に行きたくなる。
私にとって、パクチーのような存在である。

軽い気持ちだった。

展示情報をしらべたら、あのカリスマアーティストがフィーチャーされているという。そういえば、某美術雑誌でも特集が組まれていたか。読まないけど。

夕方だったこともあり、比較的遅くまで開いていることも、私を後押しした。

会場に入って、妙な空気に気づく。
暗い部屋に流れる大音量の音楽。
小さく固まって静かに聞く人々。
教会のミサか何かに、何も知らず迷い込んだかのようだった。
明らかに場違いだった。

考えてみれば、大抵の場合ファンでなければわざわざ千円払って中に入ろうとは思わないだろう。異端であることがバレはしないかと恐れつつ、平静を装いながら私も音楽を聴くことにした。

周囲は暗くてよく分からないが、雰囲気はとても穏やかだった。
ある人は瞑想していたかもしれないし、涙する人もいたかもしれない。
私はといえば、始終、心をえぐられるようであった。
中学生の頃これを聴いたら狂喜したに違いないと、
その当時の自分が黒歴史とともに脳裡に甦り、気を失いそうになった。
パクチーどころの騒ぎではなかった。

やっと会場を後にすると、観客からのメッセージが散りばめられた一角に目が止まる。
展覧会というよりは、タワーレコードの有料試聴イベントのようなものだったと考えた方がよいか。
5.1サラウンドで映像付きで、ファンにはたまらないだろうと思う。
それ以上の言葉は、まだ思いつかない。