どす黒い日記帳

展覧会の感想など(主に都内)

#13 ある日の写真探訪

ある晴れた日の昼下がり。駅の改札口。
辺りは往来する人でごった返している。
その日は写真日和であったので、写真を見て回ることになった。
最初に出向いたのは、米国橋画廊という
都心の陰にひっそりと佇む画廊だった。
その、光の差さない、いかにもひっそりとした画廊では、
建設中というテーマで写真展が開かれていた。

建設現場。疑いようもなく、建設現場であった。
作者は、〈未完の美〉を追求しているという。中学二年生が一度は通る道に敢えて留まり続ける覚悟と矜持に、胸を打たれた。
眉を毫も動かすことのない時間が、その場に流れた。

次いで向かったのは、ナヂッフという、改装したばかりの施設である。

地下の展示を見る。
前々からそうだったが、先生の写真は、上手い写真であって、いい写真だとは全く思わない。木彫りの白熊とか、どう反応していいのかわからない微妙な物を置いてお茶を濁さないでほしい。今回も相変わらずだった。

三階へ上がる。
うん・・・。顔写真をいっぱい重ねていた頃はまだしも、近作は全くハマらない。奈良原一高山崎博を足して、水で100倍に薄めたらこういう感じになるだろうか。

最後に、頂上美術館である。
同館が改修を経て、みずから頂上を宣言してから、奇妙な低めの変化球が放たれがちの日々が経験されたので、今回も若干の不安があった。

3階のテーマは、アジェである。
これまでに同館で開いてきたアジェ関連の展覧会ではフランスを中心として取り上げたので、今回はアメリカを中心に据えるという。
それは果たして、手堅かった。
アジェを一つのインスピレーション源と定め、マン・レイアボット、スティーグリッツ、フリードランダーと、アメリカ写真の一系譜が綴られていく。こういうものが見たかった・・・。変化球もいいけど、たまにはこういうものもなくては。
と、安堵したのも束の間。

とつぜんのあらーきー。

まただよ。
また「あえての」変化球だよ。
アメリカ中心て言ってなかったか。中心ってなんだ。最近、こういう雑な隠し味(隠れてない)が多すぎないか、ここは。

晴れた日の昼下がり、胸には濃霧を抱いて写真探訪を終えた。